わたしたちが日頃から目にする、ビルや道路の素材に使われるコンクリート。
コンクリートはセメントや骨材、水などの原材料でつくられています。
セメントは港にある基地から、陸の会社や貯蔵施設を介し現場に運び出されます。
国土交通省のデータから年間135隻の船が、実に39万トンの輸送に携わっているため、今日の日本の建造を支えていると言っても過言ではないでしょう。
毎年40万トン近くのセメントを輸送し、日本の建造を支えるセメント専用船を掘り下げます。
忙しい船は毎月13航海!瀬戸内海のセメント船は多忙を極める
セメント原材料である石灰石は、主に北九州や中国地方で豊富に採掘されます。
工場も港に位置し、船ですぐに輸送できるような大きな基地となっていることが多い。
そのためセメント専用船を抱える海運会社は、瀬戸内海に位置することがほとんどです。
私の友人Cさんが在籍している海運会社も九州に籍を置き、船も瀬戸内海を航海することが多いとのこと。
セメントの積荷にかかる時間は3〜8時間、揚荷は6時間。
タンカーやRORO船と、さほど差はないようです。
しかし毎月の航海数(積荷から揚荷の数)は10〜13と、過酷な労働環境なことには間違いないでしょう。
荷役中に買い物などは交代制で行けるものの、荷役の監視は必須です。
出港後の作業も控えていることから、毎日休みなく働いていることが実態なのです。
大変な職場だからこそ、心身ともに力が着実につく
基本的に仮バース(岸壁について休む)はありません。
荷役設備などの機械が多いため仕事量も増え、点検箇所は多数です。
「多忙でやることが多いため、一人前の船員になるスピードも速い」とCさん。
セメント専用船は特殊船の部類に入り、基礎を徹底的に叩き込まれるため、一般貨物船への乗船にも対応できます。
もちろん同じセメント専用船への転船も考えやすいといえます。
心身ともに船員として大きく成長することが大きな魅力です。
船員では確かな技術力とコミュニケーション能力が求められるため、転職をする場合も有利になります。
船員としての人格と技術を磨けることも、セメント船の魅力ではないでしょうか。
待遇面も船員に優しく、Yさんが所属する会社の場合、1カ月半の乗船で約2週間の休暇が与えられます。
給料は手取りで40万前後(食費、交通費は別支給)で、福利厚生も充実しているため生活は安心です。
「陸上社員との距離感も近く、なんでも意見を言える職場」と安心しながら話すCさん。
退職する船員が少ないところも、海運会社としての魅力の1つです。
社員の絆を固め、海で働く船員を優遇し守ることを信条としている会社は、船員からの支持も厚く、事故率が低いことも事実としてあるのです。