
「船員は陸上への転職が難しい」
船員を長く続けていれば、船員から陸上転職への難しさを説かれた事がある人が、ほとんどだと思います。
私も先輩によく言われた言葉です。
船しか知らない人からすれば、疑いようのない言葉ですが、実際はどうなのでしょうか。
今回は陸上転職への可能性について解説します。
実際に陸上転職は可能である
船員は長時間労働が当たり前で、閉鎖された中で仕事を行う為、人間関係も難しい。
特に新人時代は頼れる存在や精神的支柱がすぐ近くにいるとは限らず、四苦八苦するでしょう。
あまりの過酷さに、陸上の仕事へつい羨望の眼差しを向けてしまいがちです。
私自身、何度も経験したことがあります。
しかし先輩船員からは「お前はこの会社しかない。船員は陸上でなにもできないんだ」と言われてしまい、一時期は本当にその通りだと思ってしまいました。
しかし、実際はどうでしょうか。
建築関係や電気設備士の方とお話をすると、極稀に前職は船員だったと聞くことがあります。
著名人の中には、海技教育機構を卒業された方もいらっしゃいます。
視野を広げてみれば、陸上でご活躍されている元船員は少なくありません。
まずは業界内にいる人や先輩以外に、外部の情報を積極的に取りに行くと、事実を把握できます。
船員の素養も大事!しかし実績も見られる
「たとえ転職できても、機関士は陸上の整備士がある。甲板部は何もない。」
「機関部は有利で、甲板部は不利」といった言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
確かにハード面で技術力のある機関士は、やはり製造系や造船系に有利です。
それだからといって甲板部も心配することはありません。
まず甲板部・機関部の前に、船員として身につけた体力や気力、上下関係の中でも生きていける力があれば、業務を全うする事ができます。
書類の書き方を理解していれば事務職も可能です。
海に関わるマリーナ関係でも仕事はあります。
私も船員を退職後、航海士で培った管理能力でベンチャー企業の社長室をやっていました。
昨今は「最近の若者は打たれ弱い」と言われる傾向がある為、船員で培った体力や気力あれば逆にアピールできると感じます。
しかし「元船員がなにをやれるの?」「海以外なにも知らないのでは?」といった疑問は付きものです。
そのような疑問に対し、陸上会社の信頼を勝ち取るために必要なもの、すなわち実績が必須になります。
1つのことを達成できない人間に、社会は評価しません。
船員としての勤続年数や大きな船を動かした経験、昇進したことも、能力や意欲を見られるポイントです。
組織の要望に合わないと、転職は成立しない現実は当然あります。
船員が陸上で活動していくために必要なもの
船員の陸上転職の難しさの理由は、海運業界への理解度が足りていないからだと思います。
船員の仕事を具体的にイメージできる人は、陸上においてほぼ皆無です。
そのような中、自己PRを間違えると、やはり取り入ってもらえません。
私も最初は自己表現が分かりませんでした。
苦心する中、船員が陸上で生き残る術は、やはり純粋さやスピード感です。
なにもスキルがない中、社会や周囲が必要と言われたことに、とにかく全力で応える力です。
中途半端にスキルがある人よりも、純粋で相手との相乗効果を考えられる人が重宝されます。
大切なのは「転職の目的」
何の為の転職なのか、自分はどうしたいのか、どうやったら大切な人を守れるのか。
ただ「辛い」や「楽しくない」という理由で船員を辞めても、いつか同じ所でつまづいてしまうでしょう。
私の同級生も「辛い」が理由で辞めた人がいましたが、退職後も同じところで苦慮している姿を見ます。
「上司が苦手」や「仕事が大変」は、陸上勤務でも一緒です。
感情的に退職し「仕事に耐えられないヤツ」というレッテルを貼られて、門前払いになっても仕方がありません。
そこで必要なのが、転職の目的です。
目的さえ定まっていれば、たとえ陸上で大変なことが起きたとしても、「自分はこのために転職した」といった気持ちが背中を押してくれます。
動機が確立していれば、軸がブレることなく、正しい進路へ向かうことができます。
将来はこのように働きたい」「こういった人間になりたい」といった目標が定まるまで、感情に任せて転職などせず、設計と貯金をコツコツしていくのが賢い判断だと思います。
陸上の「一般常識」や「社交辞令」に囚われない
陸上への転職活動をしても、不安は拭いきれないものです。
メールや文章、礼儀、パソコンなど、いわゆる一般スキルに心配な方も多いのではないでしょうか。
たしかに大切なスキルですが、一定レベルなら追いつくことは可能です。
書籍で勉強し、現場で培えば会得できる為、努力し続ければ人並み以上に秀でることが可能です。
船員で得た集中力や忍耐力、向上心があれば、引き離された差を埋めることはできます。
社交辞令もつまるところ、関係性を円滑にするための「建前」や「嘘」です。
本音を伝えられる人間関係の構築に力を注ぎましょう。
気になる会社があれば直接話を聞きに行く
「どのように船員の陸上転職をすれば良いか分からない」と私も相談される事があります。
以下のように、自身の現状及び今後の進む道をよく検討した方が良いでしょう。
- 転職理由(辛いや大変以外)
- 給料の最低ライン
- 希望とする陸上の職種
- 土日祝定休or不定休
企業の採用ページは抽象的な記述となっている事が往々にしてある為、気になっている会社がある場合は転職を検討している事を前面に押し出し、とにかく話を聞きに行くことを私は推奨しています。
1社では比較検討できない為、5〜10社に連絡して実際に伺い、担当者の姿勢や会社の雰囲気、詳細の労働条件を聞く事で正確な情報を収集する事ができます。
業界の動向や会社側の事情を知ることが出来る為、視野を広げるという点でも数社とお話する事は有用的です。
複数社と比較検討を行った後、転職しないという道もある為、転職に迷っている方はまず自身を見つめ直し、様々な会社を調べ、門を叩いてみましょう。
LINE公式アカウントで無料相談も行っている為、「一歩が踏み出せない」と不安な場合はお気軽にご連絡下さい。