給料の高さは、数ある船員の魅力の中でも、おそらく上位に出てくるのではないでしょうか。
でもお金の使い方って学んだことありますか?
借金をしている人って実は多いのです。
高校新卒でも初年度の年収が400万円前後、内航船の船長・機関長クラスになると年収1000万円が平均です。
私が26歳で二等航海士をやらせてもらった時は、有り難いことに年収が600万以上ありました。
もちろん数字上だけでは表現できないほど、過酷な職場です。
命に関わる環境の中で、休む時間も満足に取れずに働いているのですから、甘い世界ではありません。
だからこそ、高収入というのも頷けます。
しかし当時、私の周りの先輩は、独身も既婚者も「お金が足りない」と嘆く方が少なからずおり、自分も歳を取るとこうなるのかなと、将来を案じたものです。
今回はお金が足りなくなるメカニズムと、打開策を考察していきます。
生活苦の原因は収入ではなく、支出にある
お金に困っている人を見ると、支出にだらしないことが往々にしてあります。
酒やたばこ、夜の飲み代、時計、車などに費やし、知らぬ間に固定費も重なってしまう。
私の周りでも、車のローンが発生し、船に乗らないと支払いが厳しいと言う方もいらっしゃいました。
高収入だからといって貯蓄も出来ている方は案外、稀なのです。
逆に収入は低いが、貯金は多い方もいらっしゃいます。
その差を少し解説すると、例えば月収40万円の人の支出が35万円なら、1ヶ月に使えるお金は5万円です。
しかし、月収30万でも支出が20万円なら、1ヶ月に使えるお金は10万円になります。
なるほど必ずしも高収入=貯蓄があるという訳ではなさそうです。
私は貧乏家庭に育った影響で、少年時代から今に至るまでミニマリストです。
そもそも物欲が少ないため、車や物などの固定費が増えることは基本ありませんでした。
貯めたお金は海外旅行や書籍に回し、体験や知識に投資することが多かったと言えます。
数百円、数千円の出費も、「塵も積もれば山となる」です。
収入を上げるよりも支出を見直すことが、扱えるお金をコントロールしやすいのは言うまでもありません。
生活苦の根本である支出を見直し、自身を律することが肝要になります。
高収入でお金のリテラシーが無いから騙されやすい
船員は良くも悪くも大胆なお金の使い方をします。
後先を考えない人ほど、ギャンブルや飲食、高級品にお金を使います。
いただく収入も多く、例え使い切っても乗船すればまた収入が入る環境にあるため、強い気持ちになってしまいがちです。
気持ちだけの問題ではなく、船員は、学生時代からお金について学ぶ機会がありませんでした。
突然の高収入を手にしてしまうと、思いもよらない所にお金を使ってしまいます。
不要な保険などに加入し、払い続ける方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私は20代前半の頃に、最も信頼していた学生時代の友人にお金を貸し、そのまま音信不通となって、今に至るまで返ってきていません。
当時かなりのショックを受けましたが、「友人に貸す際は、あげると思って渡す」ということを身を持って学ぶことができました。
貯めるまで難く、使うは容易なお金は、すべて自分が船で必死で働いたお金です。
稼ぎ方と同等以上に、お金の使い方を学ぶ必要があるのです。
上手にお金を使う人は、魅力的に見える
支出を抑えることを意識するあまり、お金を使わないで貯金しつづけることもまた弊害が生まれます。
寝る時間を削り、身を粉にして働き、将来使うであろうもののために、お金を貯める。
一見として賢そうな判断ですが、働く目標を見失ったり、家族や仲間、友人のコミュニケーションに支障をきたす場合があります。
貯金もしつつお金を惜しむことなく読書や旅行、人のためにお金を使う、一般的に言われる「上手なお金の使い方」をする人の話とは、バラエティに富んで現実味があるものです。
色んな人に会いに行き、知見を広める船員は、やはり魅力的に見えるものでした。
上司のお金に嘆く姿に、部下は失望する
「あなたの上司はあなたの未来」とは言い得て妙で、好きな上司も嫌いな上司も、基本的には「将来の自分の姿」という考え方は合っていると思います。
同じ環境で同じ様な給与体制になると、上司のような人格になる確率は高いと言えます。
そして、お金に嘆く姿を後輩に見せないことが最も大切です。
自分が昇格しても、お金に困るんだな…
お金に嘆く姿に後輩は、言った本人や会社、海運業界に失望します。
たとえ生活苦であっても、それらを一切感じさせない思いやりの心と、船員の誇りが大切です。
高収入の船員の落とし穴は、自身の生活だけでなく、周りの船員のモチベーションにも関わるくらい重要なことなのです。