sail tech 川名
sail tech 川名
電波が通じない、連絡を取る暇がないのが船員という働き方です。
特殊な働き方のため、奥様の理解と協力が重要になります。

船員ってどんな仕事?

現役を離れた今でも、時々聞かれる言葉です。

船員の仕事は社会的認知度が低いものですし、かといって船員が実情を公開できるほど、時間を持ち合わせてないのが現実です。

また特殊な働き方ということもあり、守秘義務も少なからずあります。

しかしながら、家庭内交際中にとりわけ問題となるのが、「夫である船員の仕事が理解できないこと」が挙げられています。

今回はリクエストが多かった、理解し難い船員の実情について書いていきます。

海上だからこそ、コミュニケーション不足が生じやすい

休暇が終わり、仕事場である船に乗船すると、すぐに自分の交代者との引き継ぎが始まります。

引き継ぎ後、休む間もなく荷役(船荷の積み揚げ)作業を行い、荷役が終わればすぐ出港します。

出港すれば、荷物の片付けを行い、まもなく航海当直(操船・操舵・見張りなど)が始まるため、メッセージのやり取りをする暇さえありません。

航海当直が終わると、さすがに疲れていることが多く、スマホを見る間もなく眠りにつきます。

この間に約半日経っていることが多く、大切な人からのメッセージを返せていないことが往々にしてあります。

私も自宅と船の「移り変わりの瞬間」は、とても苦手で、退職するまで慣れることはありませんでした。

また乗船後は、部屋の片付けや仕事が落ち着いても、船が出港し次の港に着くまでのほとんどの時間、電波が不安定な状態です。

シンプルに、「会えない」「やり取りができない」からこそ、コミュニケーションが不足してしまいがちなのです。

乗船期間のほとんどは、十分な睡眠時間が取れない

船の存在意義は、船荷をA地点からB地点に運ぶことです。

まず船荷の揚げ積みは、基本的に乗組員全員が参加します。

朝早く入港し荷役を行うこともあれば、夕方から入港し、明朝に出港ということもあります。

この船荷の揚げ積みでも、基本的にスマホが使用禁止な場合が多く、個人的なやりとりはできません。

夜だからといって、シャワーも浴びることもできません。

荷役作業は最も重要な作業だからこそ、全乗組員神経を集中して取り掛かるのです。

私も油タンカーに乗船中、夕方に入港の後に荷役を開始し、明朝1時に出港ということが数え切れないほどありました。

出港した後も、先述の航海当直や保守作業、書類業務があるため、仕事に追われることも往々にしてあります。

船上における船員の生活は、不規則で過重労働、休息が不十分が常と言っても過言ではありません。

家庭想いの船員はとても多い

船の運行に伴って、忙しさが増し、心休まる時がなかなか訪れないのが船乗りという職業です。

陸上にいる大切な人とのコミュニケーション不足に陥りやすい環境ですが、本心はコミュニケーションを取りたいと思っている方がとても多いと感じます。

1日に数分でも時間があれば、電話している方もいらっしゃいますし、自宅が近い港に入港する場合は、奥様が船に遊びに来られるときもあります。

お孫さんの写真が入ったキーホルダーを作り、肌身離さず持ち歩いている先輩もいらっしゃいました。

つかの間にある、飲み会での席では家庭の出来事を楽しそうに話す方もいらっしゃいます。

危険作業が多くあり、満足に時間を取れないからこそ、家庭を想い、大切な人を守ることに意識が向くのです。

もちろん全ての船員が円満な家庭環境を築いているわけではありませんが、私の以前の職場では、円満な方が多かったのは事実です。

船員との円滑な夫婦関係は、情報収集から

船員さんの奥様に話しを聞くと、船上での実情が見えない分、寂しく思ったり、疑心暗鬼になったりしたことを耳にします。

しかし船員とは、物理的に身動きが取れないことが多く、コミュニケーションの障壁がただでさえ高いのです。

先輩上司の奥様と話をした際に、対策を聞いたところ、決まってこう言われました。

旦那を信じて、家を守る

強い意志頼もしさを感じます。

この他にも、船を追跡できるAISなどのアプリを見て、今どこに旦那がいるか確認している方もいらっしゃいました。

船員である旦那さんからのメッセージだけでは安心できない場合は、会社や船が発信するSNSやブログ記事にも目を通すことも良いでしょう。

不安を覚えたら行動し、自分なりの解決策を見つけることが、船員における夫婦円満秘訣だと思います。