今回は現役のシップブローカーさんにインタビューさせて頂きました。
船の世界にいる私でも業務を知らないため、どのような働き方をお聞きできるか楽しみです!
世界の物流の90%以上が船で運ばれていることをご存じですか?
スーパーで売られているオレンジや家具を作る木材、ガソリンやプラスチックの原料に変わる原油。
これらがどうやって海を越えて私たちの手元に届いているのか。
その巨大なシステムを裏で支える職業が「シップブローカー」と呼ばれる、物流の影の立役者達です。
恐らくほとんどの方にとってシップブローカーという言葉は初耳かもしれません。
内航船(国内の船)で働く方でさえ知る人は少ないと思います。
そのようなシップブローカーの仕事の中身を、誰にでもわかるように現役シップブローカーの私が丁寧に解説します。
船の不動産屋?知られざる『シップブローカー』の正体
『シップブローカー』この言葉を初めて耳にしたとき、私は「船を使った何か怪しい取引なのでは?」と勝手に想像していました。
ところが、実際には海運業界を陰で支える、極めて重要な役割を担う職業だったのです。
Brokerを辞書で引くと「仲介人」という意味が出てきます。
シップブローカーとはシンプルに「船の仲介人」のこと。
主な仕事は用船の仲介と中古船の売買です。
今回は特に用船仲介に焦点を当て、その具体的な内容を掘り下げます。
船をレンタルすることを海運業界では「用船」といいます。
船は主に荷物を運ぶ乗り物ですから、荷物を運びたい会社(用船者)と荷物を運ぶ船を保有している会社(船主)がいます。
町で見かける不動産をイメージしてみてください。
家を借りたい人と貸したい人を繋ぐように、船の場合も「借りたい人(用船者)」と「貸したい人(船主)」を結びつけます。
・船主(Shipowner):家のオーナー
・用船者(Charterer):家を借りたい人
上記のようにイメージしていただければ間違いありません。
「船主」と「用船者」、この両者を繋ぎ、条件交渉(用船料や契約期間)や契約締結、運航までをサポートするのがシップブローカーの仕事です。
【情報の最前線】船主と用船者それぞれのニーズを理解するシップブローカーの仕事術
シップブローカーの仕事は、一言でいえば「船主と用船者の架け橋」です。
・船主:自らの船を稼働させ利益を得るために。
・用船者:貨物を目的地に届けるために。
シップブローカーは、この両者の異なるニーズを的確に把握し、双方にとって最適なマッチングを提供します。
そのためには、膨大な情報を集めて分析する洞察力、細部にわたる条件を調整する交渉力、そして絶え間なく変化する海運市場に対応する柔軟性が求められます。
以下では、シップブローカーの具体的な役割とその方法を掘り下げて解説していきます。
市場の情報収集
海運業界は日々刻々と変化しています。
船の需給や用船料の変化、船を動かすのに必要な燃料価格、世界経済や政治情勢、これら多岐にわたる情報をモニタリングしなければなりません。
例えばどの地域で貨物の需要が高まっているか、現在の用船料は相場よりも割安なのか割高なのか、どの船がどこで空いているか、貿易制裁の対象国の有無といった情報が重要です。
クライアントとのやりとり
・用船者:どのような貨物を、どこからどこまで運びたいのか?どのくらいのスケジュールで必要か?
・船主:どのような船を、どのエリアで稼働させたいのか?空船(貨物を積んでいない船)がどこにあるのか?
最適なマッチング
用船者と船主の条件をすり合わせ、最適な組み合わせを見つけます。
この際に情報のスピードと正確さが求められます。
貨物の種類によって必要な船の種類(例えばタンカーやバルクキャリアなど)が変わるため、その船に応じた専門知識が重要です。
契約交渉
双方の条件を基に運賃や期間、その他の詳細条件を交渉します。
この交渉スキルがシップブローカーの腕の見せどころです。
アフターフォロー
船が出港した後もトラブル対応や状況確認を行います。
予定時刻通りに港に到着できるのか、天候や港でのトラブル、スケジュールの遅れなど、予期せぬ事態に柔軟に対応することが求められます。
世界と繋がる、シップブローカーの魅力
ここまでシップブローカーの働き方を説明しました。
実際に働いてみて以下のような魅力があります。
グローバルな環境で働ける
世界中の船主や荷主、はたまた海外のブローカーとやりとりを行うため、英語力や交渉力、コミュニケーション能力を活かせる国際的な職業です。
スケールの大きな仕事
巨大な船や莫大な貨物を扱い、経済に直接影響を与えていることを実感できます。
日々の仕事がリアルタイムで世界の物流を動かしているというスケール感は、他の職業では味わえないものです。
情報戦のスリル
海運市場は刻一刻と状況が変化します。
変化する状況の中で最新の情報をいち早く収集し、次の一手を読むスリルがあります。
情報戦の中で成果を出せたときの達成感は格別です。
未経験からでも目指せる!シップブローカーになるためのポイント
シップブローカーは専門性の高い職業ですが、未経験からでも挑戦できる職業です。
必要なのは、以下のスキルや姿勢です。
・柔軟な対応力:多くのクライアントの要望を同時に扱います。
・コミュニケーション力:異なる文化や背景を持つ人々とやりとりをするため、相手を理解し、明確に意図を伝える力が重要です。
・好奇心と学習意欲:海運業界や船舶に関する知識はもちろん、常に最新の情報を追う必要があります。
この記事を通じて、シップブローカーという職業に興味を持った方は、ぜひ海運業界に目を向けてみてください。
世界中の船があなたの手で動き出すかもしれません。