わたしたちが日頃から目にする、ビルや道路の素材に使われるコンクリート。

コンクリートはセメント骨材などの原材料でつくられています。

セメントは港にある基地から、陸の会社や貯蔵施設を介し現場に運び出されます。

国土交通省のデータから年間135隻の船が、実に39万トンの輸送に携わっているため、今日の日本の建造を支えていると言っても過言ではないでしょう。

出典元:内航海運による産業基礎物資輸送を取り巻く現状 令和元年10月 国土交通省海事局

毎年40万トン近くのセメントを輸送し、日本の建造を支えるセメント専用船を掘り下げます。

忙しい船は毎月13航海!瀬戸内海のセメント船は多忙を極める

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セメント原材料である石灰石は、主に北九州や中国地方で豊富に採掘されます。

工場も港に位置し、船ですぐに輸送できるような大きな基地となっていることが多い。

そのためセメント専用船を抱える海運会社は、瀬戸内海に位置することがほとんどです。

私の友人Cさんが在籍している海運会社も九州に籍を置き、船も瀬戸内海を航海することが多いとのこと。

セメントの積荷にかかる時間は3〜8時間、揚荷は6時間。

タンカーやRORO船と、さほど差はないようです。

しかし毎月の航海数(積荷から揚荷の数)は10〜13と、過酷な労働環境なことには間違いないでしょう。

荷役中に買い物などは交代制で行けるものの、荷役の監視は必須です。

出港後の作業も控えていることから、毎日休みなく働いていることが実態なのです。

大変な職場だからこそ、心身ともに力が着実につく

基本的に仮バース(岸壁について休む)はありません。

荷役設備などの機械が多いため仕事量も増え、点検箇所は多数です。

「多忙でやることが多いため、一人前の船員になるスピードも速い」とCさん。

セメント専用船特殊船の部類に入り、基礎を徹底的に叩き込まれるため、一般貨物船への乗船にも対応できます。

もちろん同じセメント専用船への転船も考えやすいといえます。

心身ともに船員として大きく成長することが大きな魅力です。

船員では確かな技術力コミュニケーション能力が求められるため、転職をする場合も有利になります。

船員としての人格と技術を磨けることも、セメント船の魅力ではないでしょうか。

待遇面も船員に優しく、Yさんが所属する会社の場合、1カ月半の乗船で約2週間の休暇が与えられます。

給料は手取りで40万前後(食費、交通費は別支給)で、福利厚生も充実しているため生活は安心です。

「陸上社員との距離感も近く、なんでも意見を言える職場」と安心しながら話すCさん。

退職する船員が少ないところも、海運会社としての魅力の1つです。

社員の絆を固め、海で働く船員を優遇し守ることを信条としている会社は、船員からの支持も厚く、事故率が低いことも事実としてあるのです。