調理や風呂には欠かせない「ガス」。

オール電化が進んでいるとはいえ、ガスを使用している方は多いのではないしょうか?

都市ガスは液化天然ガス(LNG)、LPガスは液化石油ガス(LPG)であり、どちらも海外からの輸入がほとんどです。

東京湾や大阪湾に行くと、丸いタンクを持った巨大船が出入りしているところを見ることができます。

LPG

毎日の生活に欠かせないのであり、国内での生産も芳しくないため、輸入に頼り切っているのが実情なのです。

私も甲板手、二等航海士として乗船させてもらっていました。

今回はLPGタンカーと外航船について解説していきます。

大変さ・危険度は油タンカーに負けずも劣らず

LPGタンカーの形状には「丸いタンクを積んだモス型」と「箱型のメンブレン型」があり、ここでは「モス型」について解説します。

丸いタンクの下層には液化ガスが保管されており、上部にはガス(気体)が充満しています。

ガス(気体)が液化すると体積が数百分の一になり、一度に船に積載できる数量が格段に上がるため、冷却したガスを運ぶように船が作られているのです。

ガスの特性

  • 天然ガス:マイナス162℃となり、体積が600分の1になる
  • 石油ガス(プロパンやプロピレン):マイナス42℃で液体となり、体積が250分の1になる

例えば1,000トンのガスを輸送する場合、液化ガスとガス(気体)を合わせて1,000トンを運ぶことになります。

LPGタンカーの一等航海士は無事に1,000トンを揚げるために、環境によって変動するタンク内の温度圧力を素早く計算し、無事に1,000トンを揚げなくてはなりません。

安全に徹しながら計算に勤しむ一等航海士に、私は羨望の眼差しを向けていました。

液体・気体の両方を圧送できる大きなポンプを使い、揚荷を行います。

もちろん引火性のある危険物のため乗組員一同、指差呼称を徹底して安全荷役に務めます。

危険物の管理を徹底!外航船は事故1つで国際問題に発展する恐れも

私は日本で精製されたLPGを、韓国や中国へ運ぶ船に乗っていました。

近海区域を航行する危険物船は、規則も厳しいです。

荷物の管理はもちろんんこと、設備面船員の管理書類など、船の至るところまでチェックされます。

二等航海士も書類を管理するので、その国際ルールの厳しさに頭を悩ませたこともありました。

厳密には日本沿海を航行するときも国際ルールに従わなければなりませんが、海外の港に出入りするだけで緊張感が高まります。

入国の際の検疫や税関は、全乗組員が把握しなければならない規則です。

なにか不手際があると、船や会社に疑いの目がかけられ、着岸できなくなることもあります。

役職にかかわらず、重大な責任感がつきまとうのが外航船なのです。

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韓国沖待ちの様子

業務量の多さ、求められる技量をクリアできれば、他の船でも役務を全うできる

LPGタンカー(外航船も)は正直大変でしたが貴重な体験となりました。

私は新卒でRORO船に乗り、危険物を知らずに行ってしまったので、当時の先輩に叱られる毎日を過ごしました。

危険物船と非危険物船の安全意識の違いは雲泥の差です。

1つのミスが人身事故に繋がることすらあります。

それでも日本に欠かせないものを運ぶことには魅力的だったし、辛くても続けようと思いました。

外航LPGタンカーという厳格な船に乗れたことは、その後に乗船した石油タンカーでも身になっています。

機会があれば一度は乗っていいただきたい船です。