日ごろ着用する服や、身近にある日用品。

今来ている洋服のタグを見れば made in China やKoreaと記載されていませんか?

日本に輸入される荷物の大半は、コンテナ船で運び込まれています。

巨大なコンテナ船が外国から東京や大阪などの大きな港へ入り、行き先を分けた後、100mほどの貨物船で日本各地へ届けているのです。

各地に届けた荷物をトラックに乗せ、わたしたちの身近な運送会社に手配されています。

国外から国内へ輸入し、国内へ分配されるコンテナの数は年間で80〜90万個にのぼります。(物流の専門用語でTEU、1TEU=20フィートのコンテナ1台)

※海外から輸送された貨物を主要な港に集め、日本で分配することを「フィーダー輸送」という

今回は日本のフィーダー輸送を行うコンテナ船の実態を追います。

物流の大動脈を全うする、コンテナ船のスケジュールは過密

私の友人Kさんが乗船していたコンテナ船の長さは約100メートル。

船に載せるコンテナの量は20フィートのもので約200台です。

40フィートのコンテナの場合は100台ほどです。

あとは重さとの関係もあるため、過積載に注意して荷物を載せます。

コンテナの種類

  • ドライコンテナ:(鋼鉄製で身近な生活物資から工業製品・産業物資まで、大多数の一般貨物に幅広く利用される)
  • リーファーコンテナ:(冷却装置がついているコンテナ)

中には危険物が入っているコンテナもあります。

コンテナ1つ1つに封印があるため、船員に中身は知らされません。

荷役では早ければ1つのコンテナを2分で船から陸に揚げます。

揚げと積みを合わせて6時間弱の荷役が多い。

航路は東京を起点に清水、仙台、苫小牧も多かったようです。

「すべては外航コンテナ船のスケジュールに合わせて動いていたため、過密なスケジュールだった」とKさん。

タイトなスケジュールを持つ他のコンテナ船も存在するため、バースの取り合いになったり、ただでさえ大変なスケジュールに更に押し込んで荷役をしたりすることもあったようです。

反面、外航船の往来がなければ荷物の量が減ります。

忙しいばかりではなく、ゆるい運航スケジュールの時もあるようです。

外航船が入るまで時間がかかったコロナ禍の真っ只中では、輸送の再稼働までに時間がかかりました。

「荷物が届かない」と世間が嘆いた当時の背景には、輸入のほとんどを海運に頼らざるを得ない、日本の実態に原因があったのです。

【航路や船内環境は千差万別】同じコンテナ船でも環境は異なる

コンテナ船は航路や会社によってライフスタイル待遇もそれぞれです。

航路

Kさんが乗船していたような東日本の航路もあれば、本島と離島を結ぶ航路もあります。

毎日のように荷役を行う船もあれば、数日に一度、荷役を行う船もあるのです。

「沖縄航路で荷役が少ない船に乗った後、本船に乗ったら荷役の多さに体力が持たず、船を下りた60歳くらいのベテラン船長もいた」とKさん。

毎日のように忙しく航行するだけでなく、環境に配慮して経済スピードで航行する場合も。

現在のコンテナ船は省エネの意識も高く、運航会社からの指示でエンジンの出力を抑えて航行するケースも多いようです。

乗組員と当直

乗組員は船長1名、航海士2名、機関士2名の合計5名です。

デッキの当直は3名でまわし、エンジンは2名でまわす。

エンジンは2名のため0〜4、6〜10に分かれます。(当直の間で異常が発生した場合は、時間で区切る)

まとまった睡眠が確保できず、つらいと言って辞める船員もいるようです。

食事

食事は司厨長が乗船していないため、一ヶ月分の食費を渡されて自炊。

当番を決めて、荷役中にスーパーマーケットへ行き乗組員の分を調達します。

栄養の偏りは生まれるが、食べる時間も内容も自分で決められるため、気を使わないで済むところがメリットです。

給料

コンテナ船は45日間乗って、15日休暇が一般的です。

タンカーやRORO船と違って、乗船が短い傾向にあります。

Kさんは30歳前半で総支給50万円前後、手取りは約40万円です。

所属している会社では役職ごとの給料があまり変わらなかったものの、Kさんはやりがいと責任感に充実していたようです。

コンテナターミナルは通常、市街地から近い場所にあります。

東京の頻度が高い船舶ならば、大井埠頭の前はレインボーブリッジで夜景は格別です。

ガントリークレーンが思った以上に大迫力だった。見ているだけでも楽しい。」とKさん。

荷物は同じコンテナでも、運航会社や船主、航路によって船内の取り決めは千差万別なのです。

船員の中でも身体的・精神的な負荷は軽い!反面、落とし穴も

コンテナ船の生活は慣れれば負担も軽い。

荷役は陸上作業員が行うため、船側は管理のみです。

荷役作業を主に船側で行うタンカーやセメントなどの3,000トン級の船に乗っていた人からすると、心身ともに楽なのは否めません。

反面、新卒船員が貨物船やカーゴに慣れてしまうと、別の船に乗るのはしんどいと考えられます。

最初にみっちりと船員を知るならば、最初は大変な船に乗るのが良いでしょう。

ただしコンテナ船の船員も不足しているため、人員が溢れかえって乗れなくなることはなさそうです。

コンテナ船の船主は一杯船主が多く、自社の船員が不足して派遣船員を雇うケースも。

しかし派遣船員で固めるとトラブルが多発する場合もあります。。

トラブルが多くなると経費が重なるため、会社の経営に影響がでます。

日本の物流の大動脈を司るコンテナ業界ですが、経営不振に陥る会社は少なくありません。

経営不振の会社に雇用されている船員にも少なからず影響があります。

より物流を活性化させるためにも、経営を続けることが難しい一杯船主を糾合し、船員も船も無理なく運営できる体制が急務だと私は思います。