今年4月も操練と引き継ぎ時間にかかわる法改正がありました。
就業規則等において、航海当直の交代・操練等の時間を労働時間の適用除外と規定している場合、3月中に見直し・運輸局への届出を行うことが必要
昨年の法改正に次ぎ、今年の法改正と、対応すべきことが沢山あります。
法改正から社内で練り、船内に浸透するまでどれほどの労務と時間がかかるか、やはり大変なことだと思います。
参考:【船員法改正で変わる海運業】労働時間・人間関係の悩みが減る時代へ
今回は海運会社のご担当者と労働管理の実態や解釈について、3社とディスカッションしました。
労働時間の管理方法はツールまたはExcel
船員の労働時間はどのように管理されていますか?
基本的にオンライン対応です。
月ごとの時間外も計算し、船長のサインをつけて会社にメール提出しています。
外航の場合はMLCを守る必要がありますが、国内法とMLCでは基準が違うところもあるため、MLCではOKでも国内法ではダメな時もあったり。その逆も然りです。
専用のソフトで、船内と陸上を共有できるソフトを使っている会社も多いようです。
外航と内航の両方を持つ会社は、対応の仕方が異なることがわかりました。
昨年4月までは労働時間の超過があった会社も法改正に伴い、改善が見られたのではないでしょうか。
労働時間が超過した、また超過しそうな時は見逃さない
超過した場合はオペレーターと話し、荷主に対策を促します。
働きすぎている船員には休暇の措置を取りますね。
一等航海士の労働時間がどうしても長くなってしまうため、船長と二等航海士と協力して交代しながら業務にあたっています。
その分、会社への報告と出航後に休みを取っています。
出入港前で過重労働が目に見えてる時は、エクセルやMLCに対応したツールに模擬的に入力して、それぞれ何時まで働けるかシミュレーションをしていますね。
甲板手を2〜3名多く乗せているため、当直に人員をまわす対策なども取っていますよ。
メンテナンスが可能な日であっても労働時間が超過してしまうため、船員には休んでもらいます。
しかし船員が居ても立ってもおられず、作業をしてしまうこともあるようです。
会社と船の労働時間に対する意識が、噛み合っていない部分が見受けられますね。
メンテナンスをしない代わりにドックの作業を増やすか、増員できるくらいの賃金をプラスでもらわないと達成できない部分もあると思います。
ドック航海なら増員で乗っていただきます。
増員できる会社は交代することによって、労働時間の超過を防いでいることが分かりました。ただ、船員自身が居ても立ってもおられずに作業をしてしまうとは、私も同感してしまいます。荷役後でも天気が良ければサビ打ちをしたいし、デッキ上の気になる部分は点検したい気持ちはありますよね。
「記録上の労働時間」と「実際の労働時間」が異なる課題
一等航海士と一等機関士がしっかりと管理しています。
作業の段取りを決めて、作業時間の見通しを毎回立てています。
特に一等航海士はどこまでが仕事で、どこまでが休みかの線引きがなかなか難しい。
荷役計算は労働?デッキの見回りは労働?クルーの労働管理のためにシミュレーションすることさえも労働?ドック計画の策定は?難しいですね。
どこからどこまで仕事の線引かって、ものすごい難しいですよね。
特に入出港や荷役待機が難しいと思います。
待機時間などは労働時間として記録をしていますか?
待機が合った場合は、部署を一旦解いて休み扱いにしています。
出入港については、基本的に巨大船はスケジュールが決まっていて第一優先で扱ってもらえるため、スケジュール変更は前もって分かります。
前もってわかるため、労務管理が可能です。
着桟後の遅延に関しては最低人員を残して、事前のシミュレーションで労働時間が超えてしまう人は解散させています。
休息が1時間以内に関しては、その1時間も労働扱いになっていますが、その辺りもシミュレーションでこの人は何時まで働けるというのを計算して管理していますね。
部署発令は明確ですね。
また「事前にシミュレーションができているから労務管理ができる」について、内航船も適用されれば、担当者の負担が減るのだと思いました。
今年4月から船員法施行規則改正による時間外労働(操練や引き継ぎ)についてはいかがでしょうか?
1度の引き継ぎでかかる時間は約15分、1日2ワッチで30分なら特段分けていません。
当直と引き継ぎ時間は、本来分けて記録した方が労働時間の捉え方が違うので良いと認識していますが、船員の入力の手間を増やしたくないので、まとめて記録しています。操練は行った時間を記録しています。
引き継ぎも同様に、時間外として増やしています。
法改正に「正解の対応」が見えない現実だからこそ、情報交換が大切
約30分間、本当にありがとうございました。
双方に質問しながら、労働管理について様々な視点で議論できる場になったと思います。
みなさま試行錯誤しながら対策を練っていることが、よく理解できました。
また、質問をしようにも運輸局ごとに解釈が異なることに、私は驚きました。
法改正にあたり運輸局も対応できていないことが見受けられます。
しかし、対応ひとつで船会社の業務を止められてしまうことがあることから、怠るわけにはいきません。
だからこそ実際に稼働しながらデータを集め、他社事例を参考にしながら、運輸局へ声を上げていくことが大切なのかなと思いました。