ミスをした罪悪感や先輩からのお叱りに、気疲れしている方も多いと思います。
過度な精神的苦痛はHSP(Highly Sensitive Person:人一倍繊細な人)の可能性もあります。
もしくは自覚がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
私も最近になってあらゆる診断の結果、HSPと判明しました。
それなので現役船員のときはHSPの自覚もないまま、なんとか乗り切っていました。
思い返せば人一倍くよくよ悩み、空回りが多かった記憶があります。
最近になってようやく言語化されたHSP。
人一倍繊細で船員が向いているのかわからない、不安な方にとって少しでも参考になればうれしいです。
過酷な環境は、精神的苦痛を倍増させることも
3K(きつい・汚い・危険)の数ある職場として、おそらく上位に位置する船員。
この3Kを分解すると「帰れないこと」や「対人関係」も大きく作用しています。
船員は嫌なことがあっても帰宅してリフレッシュできません。
仕事が終わっても食事や洗濯場などの共用部で、苦手な人と鉢合わせることもよくあります。
緊急時には無理やり起こされ、癒やしがありません。
そんな八方塞がりな状況で、人間関係や仕事の失敗に尾を引いてしまい、気持ちが晴れないまま船上生活を送っているのではないでしょうか。
私も落ち込んだときに「自分もあの人のように、気持ちの切り替えがうまくできたら…。」と思うことがありました。
過酷な労働環境の上に、人間関係の悩みが重なると気持ちもさらに重くなるものです。
繊細な人にしかできない役目がある
一見つらいことしか見つからない繊細な船員。
しかし辛いことばかりではありません。
繊細な人は他の船員と比べ、異なる視点を持つことができます。
危機管理や周りへの気遣いに優れているため、船内に調和をもたらすことができます。
ベテラン船員の視点と異なる領域で、船に足りない点や改善できる点を感じ取れるのです。
まだ新人船員の時は自信がないかも知れませんが、実務経験を積むと顕著に表れます。
作業の合理性や船員の管理(体調や精神状態)に気がつくようになったり、誰もが気が付かない異常にも察知できるようになったりします。
集団の中に、ささいなことで警戒する、注意深い個体が一定数あるのは、人間のような社会的な生き物の理にかなっています。
出典元:ひといちばん敏感なあなたが人を愛するとき HSP気質と恋愛 エレイン・N・アンカー著
船内に必ず一人は配置したい人材
ここまで繊細な船員が一長一短であることが分かりました。
体育会系の雰囲気に馴染むのに苦労しますが、察知する力が人一倍あります。
私はつらく大変なときに船長から「よく気がつくお前がいると、船内の雰囲気が良くなる」と言われ、気持ちが軽くなった経験があります。
もしかしたらこの記事を読んでいる方も誰にも打ち明けられず、つらい思いをしているかもしれません。
しかし勇気を持って、人と違う視点を持ち続けることを大切にしていただきたいと思います。
乗組員が同じ視点を持つと、事故につながるミスも見抜けなくなるものです。
それが一人の気付きによって、事故を回避することは往々にしてあります。
「船員は野球チームと一緒で、ある規則に従って個性を発揮するもの」と私に教えてくれた、一等航海士の言葉は言い得て妙だと思います。
任務遂行の上で持ち味を活かす、または見つけることは大切です。
繊細な自分にしかできないことが必ずありますし、その言動に救われている船員もいるはずです。