わたしたちの身近にある自動車や紙、食料。
これら生活必需品は、国内のいたる港から都市部に運ばれていることが多々あります。
実際に私はRORO船に甲板部として乗っていたため、記憶に新しいです。
積載する雑貨等の輸送量は約2,000億トンkg前後で推移されており、80%以上がトラックで輸送しています。
平成30年のデータでは65隻のRORO船が全国を走り回っていることがわかります。
今回はRORO船について掘り下げていきます。
港間をピストン輸送!大型で速力のあるRORO船の魅力
私が乗船したRORO船は、東京の品川埠頭と北海道の苫小牧をピストン輸送するものでした。
品川埠頭で約13mのシャーシ(荷台)を120台以上、自動車を数十台、積載し30時間かけて苫小牧に届けます。
苫小牧で荷物を揚げた後、品川埠頭行きの荷物(シャーシを120台以上、自動車を数十台)を積載します。
輸送の主であるシャーシの中身は様々です。
北海道からは製紙がほぼ占めており、少数ですが果物、アイスなどありました。
東京からは荷物を出し終えた空のシャーシなどが多く、自動車は多い印象でした。
もちろんシャーシの中を調べることはできないので、上司や陸上側の管理者から教えていただいた内容です。
稀に中身がむき出しの荷物もあったので、その際は興味の眼差しで見ていました。
たまに冷蔵・冷凍シャーシも積んだため、庫内温度の監視なども行いました。
船の大きさは150m以上あり総トン数は約1万トン、エンジンは2万馬力近くあります。
そのため大きい図体の割に、速力は18ノット近く出ました。
東京と苫小牧の往復を大量輸送をしながら、3日という速さで航海する船でした。
船もエンジンも大型ゆえに管理は大変…。しかし大型船ならではのやりがいも!
RORO船はタンカーやコンテナ船と比較して大型です。
甲板部と機関部それぞれの苦労はあります。
操縦性能の低さを熟知し、対策を練る
RORO船はエンジンが自由に使えず、舵利きがわるい傾向にあります。
障害物があってもすぐに避けられないため、早め早めの行動が必要です。
主機の速力を調整する場合は当直のエンジニアへ連絡し、機関室の準備が整ってからさわる必要があります。
エンジン音が変わると、ブリッジにエンジニアが飛び上がって状況を把握しに来ます。
敏感なエンジンだからこそ、日頃からエンジニアとコミュニケーションを取ることが重要なのです。
船が大きくなると、機関室内にある機器も大型化します。
その分メンテナンスも大変になるため、甲機ともに尊重しあえる関係が大切です。
荷物および設備の徹底された管理が肝要
また、進行方向に対してシャーシが並んでいるため、過度の横揺れがあると荷崩れが発生してしまいます。
最悪、シャーシがドミノ倒しになり、横一列すべて荷崩れします。
荷崩れによって船の復元力が保たれなくなるだけでも恐ろしい…。
陸と船を結ぶランプウェイや、横揺れ軽減のためのアンチローリングタンクなどもあるため、経年と海水によって劣化し、メンテナンスが必要となります。
荷役や甲板で扱う油圧機器も多くあります。
状況によっては甲板部だけで復旧できない場合があるため、エンジニアの力を借りることもありました。
船は荷役設備が1つでも壊れて使えなくなってしまったら無論、荷役を行えず、荷主との信頼も失墜します。
新卒でもベテランでも関係なく機器の状態には常に気を配ることは必須です。
魅力としては、船が大きいため視界の良さや、颯爽と航行する気持ち良さは今でも覚えています。
居住区から機関室が離れているため、騒音に悩まされないことも安心材料です。
私のいた会社では甲板員の初任給で約27万円、4カ月乗船して1ヶ月半ほどの休暇でした。
RORO船はタンカーなどの不定期船と比べ、航海する時間や場所も一定のため、自分の時間を確保しやすい傾向にあります。
空いた時間は仕事を覚えたり、作業に参加したり、船の基礎を学びやすい環境だと私は思います。