今回は現役のタグボート船員Nさんに記事を書いていただきました!
なんと、本サイトに問い合わせしてくださり、「船の教科書」シリーズにお力添えしていただくことになったのです。
この度はよろしくお願いいたします!
突然ですが皆さん、航空機の最も危険な状況をご存知でしょうか?
実に航空機事故の7割は離着陸時に集中しています。
船舶の離着岸も航空機に類似する程、危険と隣り合わせの乗り物なのです。
そこで今回は離着岸のサポートに特化した、タグボート(曳船)の必要性や仕事内容をわかりやすいようにまとめました。
またタグボートで働いてみたい方にはイメージが掴めるよう、私のライフスタイルを例として具体的に書いています。
なお当記事はハーバータグ(港内で船や海上構造物を曳航する曳船)視点からの文章となり、オーシャンタグ(外洋の船や海上構造物を曳航する曳船)の内容は入っておりませんのでご了承ください。
巨大船や数センチ単位での着岸が求められるタンカーなど、多種多様な船舶をサポート
船舶は減速を維持して離着岸を行います。
減速に伴い船舶の運動性能は低下し、小回りが効きません。
鈍い巨大船(長さ200メートル以上の船舶)ともなると前後にしか動けない為、左右への動きをサポートしてもらう必要があります。
岸壁によっては数センチ単位での細かな着岸位置を求められる場合もあり、自身での着岸には限界があるのです。
そこでタグボートが船舶をロープで引っ張ったりタイヤのついた船首で押して、安全な離着岸をサポートします。
風圧や潮流、気象条件によっては出入港の中止やタグボートの隻数を増やすなど、様々なケースも考えられます。
水先人との関係や自力での離着岸に不安な船舶のため
船長に変わり船を安全に誘導する「水先人」の指示で押し引きをして離着岸をサポートします。
離着岸の他にも、周囲の船舶の状況を水先人に連絡したり、接近する船舶には注意喚起をします。
水先人が乗船せず、船長の指示で作業を直接行うこともあるため、海外船と英語でやりとりすることも少なくありません。
私の一日の流れです。
1.船務前日、メールにて出勤時間を確認
日によって異なりますが、主に朝4時半〜8時の時間帯に出勤しています。
2.出勤→曳船作業または保守整備
1回の曳船作業に用する時間は1〜3時間程です。
これを1日に1〜3回、多い日で5回以上行うこともあります。
12時から13時は昼休みですが、忙しい時はありません。
曳船作業がない場合、乗組員は整備作業やエンジンのメンテナンスに時間をあてています。
3. 17時頃船務終了→帰宅
夜間の曳船作業を控えている場合、時間があれば仮眠休憩をとり休息もできます。
この場合は朝の9時頃には仕事を終え、帰宅する流れです。
自分自身も入社当時、毎日異なる時間に起床し、出勤する習慣に慣れず苦労した記憶があります。
船員になると不規則な生活からは逃れられません。
今まで以上に食事、睡眠、ストレスには気遣って自己管理を徹底することが必須です。
タグボート船員のメリット・デメリット
メリット
- 仕事が終われば大半は帰宅できる。仕事のON・OFFの切り替えができる。
- .給料は高水準。年収1,000万を超える会社も存在。地方によっては給料水準も上下するが、満足のいく給料をいただける。
- 休日日数は船員の中では多い部類。弊社では年間120日+有給休暇がある。月の休日日数を固定している会社もある。
デメリット
- 船務として船内調理が存在する。タグボートは司厨員が乗船していない為、若手船員が全員分の食事を準備する。調理がないかわりに自分でお弁当などを持参する会社もある。
- 休日に急な呼び出しがある。強風などでタグボートを安全な所へ避難したり、急な作業要請を受けた場合、休日でも出勤することがある。
- 基本給は高くない。船員全体に言えることだが、様々な手当が加算され高い給料になる。
- 不規則な生活。朝早く、起きる時間も日によって異なる。夜遅くに終わることもあれば朝まで仕事することもあるので慣れるまで時間がかかる。パートナーの理解も必要。
中途退社の多い業界でもあります。
「こんな仕事だと思わなかった。」と辞めていく方も少なくありません。
タグボート船員を志す方はメリット・デメリットを踏まえて、この仕事が自分に適正であるかどうかを判断していただきたいと思います。
気になることは会社訪問や電話で必ず確認してみてください。
タグボート船員を志すあなたの理由は?
船舶の大型化が世界中で加速している近年、タグボートの存在は必要不可欠と言えるでしょう。
タグボートは「荷役」ではなく「船」を安全に港へ届け、送り出す仕事です。
数千トンの船から10万トンを超える巨大船まで、世界中の船に携わることが出来るのが、タグボート最大の魅力だと感じます。
あなたがもしタグボート船員を志すのであれば、なぜこの仕事に就きたいのか?
自分自身、「船員が辛くても毎日帰宅できるタグボートなら頑張れる!」と決心していた為、今日まで続けることができました。
仕事を決める明確な理由は、モチベーションへ作用します。
あなたといつか同じ海で働けることを心待ちにしております。
記事作成ありがとうございました!
明確で臨場感のある記事内容でした。
sailtechでは船員の能力開発と船以外の才能発見も今後行って参ります。
もし書きたい内容や共有したいことがあれば、いつでもお気軽にお問い合わせください。