旅客船とはお客様を乗せる船の総称です。
船舶安全法では12名以上、海上運送法では13名以上のお客様を乗せる船と法律で定められています。
私自身は旅客船の船員に就いたことはないのですが、制作業務や乗組員の実際の声を通して本記事の作成にあたりました。
今回は「船員の花形」といわれる旅客船について解説していきます。
旅客船によっては貨物輸送を併用する船も
「旅客船」といっても抽象度が高く、広義的な意味で使われることが多いです。
旅客船の種類
・クルーズ客船
・フェリー
・高速船
・レストラン船・遊覧船
クルーズ客船
日本国内で有名なクルーズ客船といえば、商船三井客船株式会社のにっぽん丸、郵船クルーズ株式会社の飛鳥Ⅱです。
寄港地でのツアーや船内生活を楽しめるようにつくりこまれています。
豪華客船に乗り、1度は優雅な時間を過ごしてみたい方も多いのではないでしょうか。
フェリー
クルーズ客船と似ている格好ですが、役割は異なります。
観光名所や航海自体を楽しむものではなく、交通機関として利用されます。
東京〜大阪間、青森〜北海道など、日本沿岸を定期的に航行しているのです。
また貨物船の要素も濃く、乗客の荷物のほかに輸送貨物も積載して運航します。
高速船
離島航路によく見られます。
速力も40ノット(時速約80km)近く出るため、東京〜伊豆大島をフェリーで約6時間かかる距離を、約2時間で航行します。
スピード重視の船のため貨物は積載できません。
東京〜大島の高速船では、250人弱の旅客と旅客の手荷物を載せることができます。
レストラン船・遊覧船
湾内や港内を遊覧し数時間、食事とロケーションを楽しむ旅客船です。
都心からほど近い港から出港することが多く、気軽に乗船して楽しむことができます。
東京では竹芝桟橋、横浜からでは大さん橋から出港し、平日の夜や土日に楽しむ方も多いようです。
内航船との大きな違いは「接客サービス」と「居住性」
旅客船でもっとも気をつけなければならないのが、乗客の安全です。
怪我や死亡事故が発生しないように、安全航海の徹底や緊急対応などがマニュアル化されています。
接客サービス
クルーズ客船や大型フェリーでは甲板部・機関部以外に、お客様の対応に特化したホテルサービス部も存在します。
お客様からの質問や要望、緊急時などに対応する、まるでホテルマンのような存在です。
特にクルーズ客船は船内におけるインフォメーションや寄港地でのガイドツアーの案内、税関書類、両替など、船旅を円滑に楽しめるようにお客様を支えます。
バーやスパ、ショップも開店しているため、美容師やバーテンダーなど、実に様々な人員が乗船しているのです。
居住性
旅客船は特に居住性も重視しています。
船旅には横揺れや振動、騒音など、お客様に負担がかからないような措置が取られているのです。
例えばフィンスタビライザーのように船底近くに羽のようなものを出し、横揺れを軽減します。
航海中は波の受け方も重要で、波長や波高を鑑みて航海計画を練ることは常です。
すべてはお客様にご満足いただけるように、配慮されています。
お客様への安全とおもてなしが重視される旅客船
貨物を運ぶ貨物船、油を運ぶタンカーのように、船は運ぶ対象によって構造も船員の生活も変わります。
客室と船員の居住区・共有部は完全に分けられています。
「安全区域である客室」と「実際に船を動かす危険区域」を隔てることで、お客様に危害がないような対策が施されているのです。
クルーズ客船の乗組員は、乗船中も上陸中も常にお客様の目を気にしなければなりません。
クルーズ客船の一等機関士は「作業服や制服すべてを合わせると8種類ほどある」と仰っていました。
作業用だけではなく祭典の出席やお客様の前に出る際に、場面に適した制服を着用するようです。
安全運航だけではなく、お客様からの印象に配慮していることも伺えます。
催し物も精力的で、お客様の「海と船を楽しみたい」「船旅をゆったりと味わいたい」といった要望に応えながら、長い船旅に飽きないようなイベントを行います。
特にお客様と密接なホテルサービス部や、挨拶の機会が多い船長は、サービス精神が大切なのだと感じました。
「安全」と「おもてなし」を第一に置く旅客船では、船員の人格も重要であり、お客様の目線に立って物事を見れることが大切な職場なのです。